2020年読んだ本、良かった本

去年買った本のなかで良かった物を紹介する。

良かった本3選

SF映画タイポグラフィとデザイン

SF映画のタイポグラフィとデザイン

SF映画のタイポグラフィとデザイン

  • 良かった度: ☆☆☆☆☆
  • オススメ度: ☆☆☆☆☆

淀屋橋ジュンク堂でたまたま見かけて購入。去年読んだ本の中で一番面白かった。

SF作品における定番フォント "Eurostile Bold Extended" をはじめ、いわゆる「SF風デザイン」がどのようにして形作られてきたのか、歴代の名作SF映画を振り返りつつまとめた本。 SF映画とデザインというテーマで書かれた書籍では「SF映画で学ぶインターフェイスデザイン」が有名だが、あちらがコントローラー、音声、VR/ARといったインターフェイスの要素ごとにSF映画を分析しているのに対し、本作では2001年宇宙の旅スタートレック、エイリアンなど、SF映画史のマイルストーンとなる作品の1カット1カットにあらわれるフォントやデザインを異常な情熱で調べ上げることで、「SF風デザイン」の進化の歴史を辿っていく。

ライトな文体で書かれており図も多いので、文章はとても楽に読めるんだけど、いかんせん情報量が多く、ググりながら読むことになるので、ページ数の割になかなか読み終わらなかった。 例えば、『エイリアン』のパートでは、タイトルロゴが表示されるカットに5ページも費やして、エイリアンのロゴがその後のSF映画に及ぼした影響を解説してくれる。

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扱うテーマも面白いけど、この本の一番の特徴は、著者の異常な知識量とオタク的情熱あふれる文章だ。 デザインやタイポグラフィに興味のない人でも楽しめると思う。 ただ、語り口があまりにも早口オタクすぎるので、それが肌に合わない人はいるかも……?

有害無罪玩具

有害無罪玩具 (ビームコミックス)

有害無罪玩具 (ビームコミックス)

  • 良かった度: ☆☆☆☆☆
  • オススメ度: ☆☆☆☆★

新都社で連載していたチラシの裏さんの短編集。出版されたのは一昨年?

この人の漫画は、不死者、山人、平行世界など、「向こう側」の存在を描いた物が多い。 どの作品でも、世界の設定や、その世界に住む人のモノローグが淡々と書かれているんだけど、独特のリズムがあり美しい。

語り口にクセがあるので、人によっては読むのが疲れると感じるかも。 Webで公開されている作品もあるので、まずは読んでみてほしい。

tirasimanga.web.fc2.com

愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家

愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家

愛国とノーサイド 松任谷家と頭山家

  • 作者:延江 浩
  • 発売日: 2017/03/08
  • メディア: 単行本

  • 良かった度: ☆☆☆☆★
  • オススメ度: ☆★★★★

図書館でたまたま見つけてKindleで購入。 戦前の右翼政治結社から松任谷由実に連なる、昭和の文化人の人脈をメチャクチャ駆け足で紹介する本。 カバー範囲が異常に広く、三島由紀夫楯の会の制服をセゾングループ堤清二が提供した経緯とか、重信房子が逮捕されたときに娘は頭山家の世話になったとか、そういう小話が無限に出てきて、Wikipediaのリンクを高速に辿っていくような体験ができる。

ただ、Amazonのレビューでも言われているけど、無反省なノスタルジーとでもいうか、昭和のブルジョワの価値観について無批判にかかれている箇所が多く、文章のテイストがかなり厳しい。 僕は国粋主義にトラウマがあるので所々吐きそうになりながら読んでたけど、それでも「昭和の価値観」をなんとなく追体験できた気にになれるので、耐性のある人にはオススメできる。

2020年に読んだ技術/デザイン関係の本

Clean Architecture

ボブおじさんの長年のキャリアから導き出された、設計上のベストプラクティスをまとめた物。 いわゆる「クリーンアーキテクチャ」(オニオンアーキテクチャ)はちょろっとしか出てこないので注意。

Amazonのレビューで言われてるほど昔話オジサンという感じではない。ぼくが昔話好きなだけかも知れないが……

ゼロから作るDeep Learning

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

  • 作者:斎藤 康毅
  • 発売日: 2016/09/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

名著。

オブジェクト指向UIデザイン

オブジェクト指向UIの紹介とケーススタディオブジェクト指向の歴史について書かれた本。

タスクベースのUIではなくオブジェクト指向UIを採用することで得られるメリットや、実際の設計プロセスを学べる。 帯に「銀の弾丸」とあるが当然そんなことはなく、エンジニア目線で見ると違和感を覚える箇所もあるが、新規にUIを設計するときには本書の内容を頭の片隅においておくと良さそう。

Webフロントエンドパフォーマンスチューニング

案件でパフォーマンス改善に詰まったので購入。 ちょっと古い本だけど、いわゆるWebフロントエンドにおけるパフォーマンス問題とその対策がまとまってて、読みやすいし実践にも生かしやすい。 ただ、こういうプラクティスは数年で新しい指標が出てきたりするので(最近だとWeb Vitalsとかあるんでしょ?よう知らんけど)、定期的に新しい情報をまとめた本が出てくれると嬉しいな。

あと、個人的にリリース前のパフォーマンス改善チェックリスト作りたい。

デザイナーの英語帳

デザイナーの英語帳

デザイナーの英語帳

去年からフリーランスになったので、コミュニケーションに役立つと考えて購入。 プロダクトデザイン/UXデザインで使われる英語表現をまとめたもの。 単語帳形式ではあるんだけど、用例と解説が参考になるので、辞書的に使うというよりは通読したほうが身につきそう。

駅をデザインする

駅をデザインする (ちくま新書)

駅をデザインする (ちくま新書)

ちくま新書Kindleセールで購入。 駅の空間デザインからサイン(ホーム番号や方向案内など)の作り方、ブランディングまで、駅がどのように作られるかを、国内だけでなく海外の事例も交えて解説している。 普段利用している駅がどういう意図でデザインされたか考えるきっかけになり、とても楽しめた。


2020年はほとんど自宅で仕事することになり、移動時間が減ってしまったので読書にあてる時間が少なくなってしまった。 今年も引き続き自宅作業メインになりそうだけど、ちゃんと勉強したりコンテンツを楽しむための時間を作れたらいいな~